とある大学教員のひとこと日常広場

「サラリーマンは、スジを通せ」

U-NEXTで、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の第135回「サラリーマンは、スジを通せ~鉄道ダイヤ作成・牛田貢平」を見た。

「電車は時間通り来て当たり前」という文化は、日本独特のものであるという話はよく聞く。

秒単位で正確に仕事しても褒められないのに、ちょっとでも遅れるとクレームもの。

日頃お世話になっている私も、それが当たり前になっちゃってる。

今回お話に出てくる牛田さんは、鉄道ダイヤを決める「スジ屋」の方。

すべての列車の動きを、「スジ」によって把握する列車運行表は、あまりに複雑で目が回りそう。

前から東西線は時間に正確な印象があったけど、その立役者はなんと牛田さん。

以前は遅延のイメージが強く、クレームも多かったという東西線では、牛田さんのおかげで遅延が半減したそう。

それによってクレームも10分の1になったとか。

牛田さんは、「この遅れはどこから来るのか」という仮説を立てて、それを実証するために、現場にも赴く。

列車運行表だけ見ていても、実際に現場でお客さんの様子がどうなっているのかは分からない。

現場出身の牛田さんならではの強みを発揮している。

そんな牛田さん、「数字が苦手」と言いながら、オフィスではそろばんをパシャパシャやっている。

「こっちがこうだと、あっちがこう…」みたいな感じで、パズルみたいに改正案を考える様子は、ちょっと楽しそう。

(私もこういう、複雑怪奇なことで頭を使うのが好き)

とはいえ楽しそうとも言ってられないのが、社内外との調整。

たった一本の電車を15秒前倒しにするだけで、車両点検側や他の鉄道会社にも許可をもらう必要がある。

それがお客様のためになるなら、やる価値はある」というスタンスで、車両点検サイドに70回も提案しに行ったこともあるんだとか…!

OKが出るまで、愚直に数をこなす「不撓不屈」の精神。

そんな牛田さんも、かつては心が折れかけたことがあるそう。

大きな組織のなかで、自分の考えが通らなかった20代。

「自分はこの組織にとって何なんだろう」と疑問をもってしまい、転職活動もしていたとか。

それでも、「組織が悪い」とか周りの所為にして甘えていたんだと気づき、与えられた仕事を全うすることに専念。

(私も最近、公立大学という組織の融通の効かなさに、「クソ公務員め~!」なんて思っていたのを反省した…)

それから、「数字/資料」と「現場」の違いも今回のテーマだと思う。

数字/資料で分かった気になっていても、現場で自分の目で見ると全然違う印象っていうことはよくある。

デスクで仕事をするのではなく、現場で仕事をする気概の牛田さん。

私も、地域経済学を専門にしていながら、島根に1年間住んではじめて分かったことがたくさんある。

「地域にはヒト・モノ・カネ・情報のハンデが大きい」というのを理屈では分かっていたけど、それで研究していてはいけないということを感じた。

実際には、人々の思考の硬直化が大きな問題のひとつだと、今は思っている。

「人手が足りない」とか、「予算が足りない」とかは、結局のところ言い訳でしかない。

「じゃあどうするか」っていう発想で努力するのを怠っている印象。

現状でも生きていけるわけだからね。

「言われたことをやっていればいい」っていう。

衰退した地域に限らず、日本のサラリーマンって、あまり自分で頭を使って働いていない感じがしていたけど、牛田さんは全然違った。

与えられた仕事に全力で取り組むのはもちろん、その仕事の先をちゃんと見てる。

「一番簡単なのはこの方法だけど、それだとお客さんに迷惑がかかる。これは会社の都合だから、そんなことはしたくない」

そう言ってまた頭を抱える姿は、サラリーマンの鏡だと思った。

よくお店とかでは、「こういう事情があって…申し訳ありませんが~」って言われるよね。

私が地方に来て一番モヤモヤするのはコレかも。

もうちょっと頭使えばそれくらいどうにかできるでしょってことでも、平気でそういうこと言う店主は地方に多い気がするの、私だけ?

観光先とかならまあ、ご愛嬌で済ませちゃうことも、実際に住んでいると軽い絶望感すら覚える。

「○○できない、じゃあどうするか」って自分の頭で考えて、最適解を見つける努力を続けるのが"プロフェッショナル"
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