読書記録

『ハイパフォーマー思考』を読んで

増子裕介・増村岳史著『ハイパフォーマー思考』を読んだ。

ー仕事ができる人、優秀な人とはどんな人なのか。

その定義は、時代によって変わっていくのが普通であるー

AI時代では、「知的体力」を習得し、アップデートしていくことこそが、ハイパフォーマーへの一歩であり、

「知的体力」とは、「正解がない問題をさまざまな角度から掘り下げ思考し行動する力」であるという。

そして知的体力は、いくつになっても進化・成長させることができるものだそう。

では知的体力を進化・成長させるためにどうすればいいのか。

知識・スキルとしてではなく、部署や職種が変わっても通用する「思考・行動様式」として鍛える必要がある。

そこで、ハイパフォーマーたちの「思考・行動様式」を分析した。

ここまでは、まあ他のビジネス書でも、別の表現で言われていることかなと思う。

そして、「はいはい、その通りだね」で流してしまいがち。

最大公約数的に得られた「7つの思考・行動様式」も、

  1. 「なんとかなる」と思ってやってみる
  2. 柔軟に方向転換する
  3. 自分とは異なる価値観や文化を認め、受けいれる
  4. 仕事を「プレイ」する
  5. 常に学び続ける
  6. 人との縁を大切にする
  7. 物事を斜めから見る

と、ともすれば「ふ~ん」で終わってしまいそうな内容。

そりゃそうだ、あらゆるハイパフォーマーのインタビューから共通点を抽出したんだから、抽象度は高くなる。

抽象度を上げると、実感を伴わなくなって、価値が薄れるという問題。

「知っている」と「できている」には大きな違いがあるという問題。

しかも、「知識・スキル」は、外圧や強制によってマスターできるけど、「思考・行動様式」は、自主的に、腹落ちしたうえで習得する必要がある。

だから本書では、それぞれの思考・行動様式について、エピソードを通して実感してもらう工夫が施されている。

そのまとめ方が秀逸で、抽象的な話と具体的な話のバランスが程よく、腹落ちしながら読める内容。

構成もシンプルで、「仕事ができることとは」→「ハイパフォーマー分析の背景」→「ハイパフォーマー分析による7つの思考・行動様式」→「実践」という流れになっている。

最後の「7つの思考・行動様式」チェックリストもありがたい。

読んでいて、自然とポジティブな気持ちにもなれるし、仕事への意欲も湧いてくる。

学生にぜひとも勧めたい本だし、私も、折に触れて何度も読み直したい。

本書の学びとしては、「7つの思考・行動様式」に尽きるんだけど、敢えてそれ以外の気づき・TO DOを挙げるとするならば…

①心のなかでテンパってもいいけど、それを表情や口に出すのはやめよう

「この状況からどうやってハッピーになるんだろうって想像する」のも素敵。

②デザインは課題解決のため、アートは表現の創造・発明のためにある

これって、「企業研究」と「大学研究」の違いでもあるんじゃないかな。

社会から「役に立つ」ことが求められているけど、大学や学問って、必ずしも役に立たない研究にも寛容ではなかったかしら?って、最近思う。

大学は、役に立つ・立たないに関わらず、知の創造のために存在しているのかも。

大学教員として、この「そもそも」論について、今後も悩んでいきたい。

③「仕事をプレイする」の落とし穴

自分の仕事に惚れ込めば惚れ込むほど、「分からないヤツが悪い」的な独りよがりに陥る危険性がある。

かといってお客さん側に偏り過ぎると、「そもそも何がやりたかったんだっけ?」ってなる。

このバランス…私の一生の課題かもしれん。

普通のサービス業とかなら、もうちょっとシンプルに考えられるのかもしれないけど、「教育」の世界ならではの特殊な問題があると思う。

基本的に、教育の「結果」って、そんなすぐに現れるものではなくて、10年後とか20年後にやっと分かることもあるわけで。

しかも、学生本人がその場でその価値を判断できるものでもなくて。

予備校とか、目的がはっきりしてるところはいいけれども。

学生に「迎合」してるのか、教育の価値を上げているのか、その境界が曖昧なんだよな…。

現時点での自分なりの答えとしては、「分かりやすさは大事、でも負荷はかける」という方針なのだけど。

Pocket
LINEで送る