『史上最高にわかりやすい説明術』を読んで
深沢真太郎著『史上最高にわかりやすい説明術』を読んだ。
ビジネス数学教育者である著者は、難解なイメージの強い数学を、中学生でも分かるように教えるプロ。
私も計量経済学とかを学生に教えているから、なんだか親近感のわくプロフィールだ。
「専門的なことを分かりやすく説明する」というのは、私にとって永遠のテーマ。
ふと、「説明」に関する書籍を読んでみたくなり、専門的な解説をするための本を探して、本書にたどり着いた。
率直な感想としては、ちょっとくどくてイライラするけど、やっぱり分かりやすい。
初期情報も地味に多く、今までの価値観を覆させられる感じで、脳がちょっと拒絶反応。
それだけに学びが多い。
たとえば…
①「説明」とは、相手が自分で説明できるほど理解してもらう行為。
頭をつかって、「誰でも同じように理解できる内容」を作って、伝える行為。
だから大学での講義の場合、どんな学生でも、他の誰かに教えられる状態にさせてはじめて、「説明した」ということになる。
(…え~そんな無茶な。っていうのが本音。ハードル高すぎて、逆に萎えるべ)
そこから思ったのは、講義という名のインプットは、できるだけわかりやすく。
でも脳みそは負荷をかけないと鍛えられないから、アウトプットは厳しめに。
…というのが理想かもしれない。
だからやっぱり、「誰でも同じように理解できる内容」を作る努力は、プロとして大事なんだね。
②説明の4ステップ「タイトル」→「内容を最大3つの塊に分ける」→「塊同士に矢印を加える」→「1分で説明できるようにスリム化する」を踏む。
これによって、「1分で、1つのメッセージを、最大3つの要素で説明する」、すなわち、「1-1-3」の説明が完成する。
あれ?じゃあ、90分講義の場合はどうするの?
1分の説明×90個?全体で3つの要素で説明?
…後者かな。でもまあ、取り敢えずこれだけは実践してみよう。
③人間は論理ではなく、感情で動く生き物。
だから、論理的な説明なら理解してもらえるなんてことはない。
論理的なことを、感覚的に「なんか、わかったかも」と思わせるのが大事。
そこで、例と比喩を使いこなすのがポイント。
例はまあ、意識せずとも使っているとして、「比喩」っていうのがね。
比喩を作るために、本書では、「つくり」が同じものを探すというアドバイスを提示している。
これが一番の気づきかもしれない。初見の情報。
物事の構造を把握し、同じ構造のものに例える。
方法としては、けっこう面白い。
でも、この「構造」とかメカニズムを理解するのって、相当な背景知識や深い理解度がないと難しい感じがして、講義に活かせるか不安。
この部分をもうちょっと解説した本があったら、続けて読みたいなと思い、著者の書籍を漁ってみることにした。