読書記録

『組織や前例に縛られず、自分で考えて答えを出す 独立思考』を読んで

山本大平著『組織や前例に縛られず、自分で考えて答えを出す 独立思考』を読んだ。

私が教えている大学生は、よく言えば従順、悪く言えば「自分がない」タイプの子が多く、もやついている。

「言われたことだけやってればいい」っていうスタンスから脱して、自分の頭で考えて行動できる人に育てないと、なんかヤバいことになるという問題意識から、この手の本も読むようになった。

ただ感想としてはまあ…ん~って感じ。

全体の構想は面白いし、言ってることは正論っぽいし、本当その通りなんだけど、ちょっと薄い感じがする。

同じようなことは、色んな本で既に言われているわけで、著者自身の独自の解釈は少ない印象。

ビジョンとか方向性とか、「こういうことを意識しようね」という本としてはいいけど、いざそれを実践しようとしたときに、「…?」ってなる感じ。

既にできてる人からすれば、「そうだね」で終わるし、できてない人からすれば、「それで、じゃあどうしたらいいの?できないから困ってるんじゃん」ってなるような本。

一見、ノウハウっぽいことは書かれてはいるんだけど、いまいち汎用性がないというか、「あとは自分で勉強してね」という感じなのかな。

それはそれでいいんだけど、それを自覚したうえで推薦図書などを挙げてくれたら、羅針盤のような本として成立すると思う。

でも、たぶんだけど、著者自身も「実践的でしょ」って思ってるのかな、そこがどうも腑に落ちない。

それならいっそ、ケーススタディを羅列してくれた方が読みやすいし、学びも多いように思う。

これは、著者自身も「ひねくれて読みなさい」的なことを書いていたので、そういう風に読んじゃったから、そういう感想になったとも言えるけど。

(「ひねくれ思考」の泥沼に沈むのを生業としている研究者には、「ひねくれ」がちょっと物足りない)

あれかな、まだ暗黙知を暗黙知のまま書いていると、こういうことになるのかも。

いるよね、カリスマで、実際にすごい人なんだけど、「それができたら苦労しない」っていうアドバイスを、「大したことないんだよ」って感じで教える人。

それを「大したことない」「ベイビーステップ」だと思えるから、それだけの成果を出せているわけで、凡人からすると、それは結構「大したこと」なんですね。

っていう、ものすごい隔たりを感じる。

実際、著者は仕事でものすごい成果を出しているのかもしれないし、他の人にも伝承したいのかもしれないけど、この抽象度だと難しいんじゃないかな。

ちょっと風呂敷を広げすぎて、一つひとつのピースが弱い感じなので、各論を掘り下げた本を出してほしいなという感想。

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