まつえペイントの「アミコート」―塗装でできる働き方改革―
自分の仕事も、つい「時間の切り売り」になっていないか、考えることがある。
今回は、アナログ仕事の多い地方で起こったイノベーションのお話。
この話からは、時間の切り売りから逃れられない人たちにもできる
「働き方改革」のヒントが得られる。
肉体労働こそ、時間を切り売りする発想からの脱却が必要というお話。
中国地域ニュービジネス大賞表彰制度で大賞を受賞した
株式会社まつえペイントさんの後継経営者・小田専務の講演を聞いた。
建物の塗装は、通常3回行わなければならず、特に時間がかかる工程らしい。
時間も労力もかかるうえ、長時間低賃金労働になりやすく、高齢化も相まって職人不足の問題が深刻であるという。
そこでまつえペイントさんは、
3回塗装しなければならないのを1回で済むような塗材「アミコート」を開発された。
これにより、一人当たり塗装面積が増えるので、受注サイクルの効率化や働き方改革への多大な貢献となっている。
今回の講演では、そこに至った経緯もお話いただいた。
元々事業所としていた出雲営業所と米子営業所が、それぞれ独立することになった。
そこに挟まれた松江本社は、商圏が重なることによる価格競争を避けるため、特殊品を扱うことで差別化を図ろうとした。
しかし、ネット販路の拡大により、特殊品は全国どこでも簡単に入手できるようになった。
小田専務の父である社長が、「いい塗料ができた!」と報告。
当時、小田専務は、同じ建築業の東京の会社で勤めていたものの、「いつか父と一緒に仕事がしたい」と思っていたこともあり、まつえペイントさんに転職した。
ところがふたを開けてみると、まだ「作ってみた」という段階で、「確かな品質の製品の安定供給」にはまったく届かない状態。
「生産体制の確立」「検査」「販路開拓」という大きな課題が残っていた。
「ハァ⁈」ってなった小田専務の頑張りもあって、これらの課題は最終的に、他の関連企業との協力で実現できた。
0→1で創造力と行動力のある社長と、1→100にできる小田専務。
当時は決して良好な関係ではなかったものの、今はお互いに補い合うようなかたちで一緒に働くことができているという。
小田専務は大学時代、環境経済学を専門にしていたことから、環境面を配慮した製品づくりを心がけている。
しかし、企業や消費者からみれば、単純に環境を重視した買い物の動機づけは弱い。
そこで小田専務は、消費者が「購入する理由」をつくった。
すなわち、他の塗材よりも高耐久な「アミコート」は、割れにくく、汚れにくいというメリットを押し出したという。
こういった「相手目線」からの逆算思考は、小田専務の説明力にも表れている。
社会人として理系の大学院に行ったこともあるそうで、「専門家」視点と「ユーザー」視点の両方の立場に立つことができる。
バリバリ理系の専門家の話を、分かりやすく通訳するかたちで説明できるなんて、そうそうできることではない。
どうしてそんなことができるんですかと聞いちゃったら、やはり「相手が聞きたいポイント」から逆算して説明しているとのこと。
今回の講演は、情報量が満載でありながらもシンプルで、それでいてずっと惹きつけられるお話だった。
私もそんな講義ができるようになりたい。
それはさておき、今回のポイントとしては、
①問題を抱えたまま、目の前の仕事で手一杯になって放置しないことの重要性
②「じゃあどうするか」という思考癖の重要性
③「相手目線」から逆算して話したり、生み出していくことの重要性
ということに。
建築業界と同じく、現場ありきのリラクゼーション業界にいた身としては、
時間や手間暇に頼り続けることの問題の大きさはよく分かる。
そこで大抵は、「しょうがないよね」で済ませちゃうんだけど、そこを「じゃあどうするか」っていう発想にもっていけるかどうかがカギなんだろうな。
惰性で働くんじゃなくて、自分の頭で考え、解決策を見出せる人材は、どこに行っても重宝されるし、成功する。
そんな学生をたくさん育てられたらいいなぁ。
大学で得た学びを活かしまくって働いてる人と出会えて、頑張ろうとより思えた。
ということで、肉体労働こそ、時間を切り売りする発想からの脱却が大事。
それが結局、「働き方改革」になる。
アナログ仕事の多い地方ほど、目の前の業務に手一杯でイノベーションは難しいという事情はある。
それでも、長期的なスパンで「どうにかできないか」を考える時間くらいは確保したいところ。
現時点では、「アミコート」に携わる企業は県外らしい。
島根県の産業連関を高めるとすれば、県内企業で賄える日がくるといいな。
