とある大学教員のひとこと日常広場

天気晴朗ナレドモ波高シ

10年以上推しているALI PROJECTが、ニューアルバム『天気晴朗ナレドモ波高シ』をリリースした。

30周年記念アルバムは、1年以上前に出た『Belle Époque』以来の2作目。

ベルエポも好きだけど、今作もすごい力が入っている。

どの曲も、アニメとタイアップしててもおかしくない。

近年の傾向として、アリプロらしさも残しつつ、新しさ&(不協和音少なめという意味で)聴きやすさが増しているような。

(そしてどんどん早口になっているような…笑
今なら「青嵐血風禄」がゆっくりに聴こえるかもしれない)

アリカさんの歌詞も、昔ほど抽象度は高くないし、素直に読解できる感じに。

時代の流れに合わせているのかな。ちょっと寂しさも感じつつ。

その反面、今回は大日本帝国時代や90年代ポップスを彷彿とさせる曲調もあり。

そして相変わらずの複雑怪奇さ、気違いっぷりに大満足。

昔はよく、「アリプロはどの曲も同じように聴こえる」とか言われたものだけど、今作は幅の広さがダイレクトに伝わる。

いつにもまして、アリカさんの歌い方が色々開発されている点も面白い。

アルバムタイトルの「天気晴朗ナレドモ波高シ」という言葉は、日露戦争時に、ロシア大艦隊を目前にした作戦担当参謀中佐、秋山真之が書いた電文の一部らしい。

最初は「妖怪」系を意識していたものの、時代が時代なだけに、前向きな方向に転換しようで。

毎年ひとつのテーマに基づいて、10曲の新アルバムをコンスタントにリリースするアリプロ。

アリプロ30年の歴史のなかで、花魁妖怪とか、地獄とかをテーマにした曲は多々あれど、それらをひとつのアルバムに集約したら、さぞおどろおどろしいアルバムになることでしょう。

(アリプロの場合、かえってポップになっちゃうかも…?)

いつかタイミングが来たら、そういうのも出たら嬉しいな。

1曲目の「絶途、新世界ヘ」は(妖怪系でいこうとしていたときに作られたということもあり)、アリプロらしい荘厳な出だしから始まる。

まず、何より、曲名が良い!

水兵さんっぽいジャケットを開いて、1曲目から大海原に漕ぎ出す感じね…!

アルバムタイトルになっていてもおかしくない感じがする。

「(サビ→)Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→間奏→サビ」のパターンが多いアリプロにしては珍しい構成。

どれもサビっぽい雰囲気だな。

弱さは 腐った優しさ抱きしめる
強さを授けよ 眠れる勇者の血

「絶途、新世界ヘ」より引用

私も、「好かれたい症候群」のために、学生に「腐った優しさ」をもって接しないように気をつけよう。

2曲目「万花繚乱姥桜」。好きだな~~~

アニソンっぽいから、いつかあとづけでタイアップくるかもってくらい、メロディがいい。

サビもいいけど、Aメロがじわじわ好き。

アリカさんの作詞は、あくまでフィクションの世界で書かれているから、私的な詞って実は少ないと思う。

そんななか、アリカさんの美貌の秘密を垣間見るこの曲。

このタイミングで出たのも、妙に意味深。

まあ、ジャスト・ナンバーってことよね…!

この曲の歌詞は全体的に好きだけど、

万花繚乱 千でも足りぬ
咲き誇って行かん
ひとりひとり開く花
何歳になっても
さあそのまま輝け 爛漫

「万花繚乱姥桜」より引用

この曲はまさにこれに尽きるという感じで、かっこよすぎる。

アリカさんのブログ記事での解説を読むと、これがまた泣けるんだな。

アリカさんにしか書けない、歌えない曲ということが分かる。

…そうか、アリカさんの天使のほっぺたは、早口歌唱の賜物か!(たぶん違う)

途中に入り込んでいる魔女の笑い声もいい。つられてクスッとしてしまう。


 
3曲目は「80秒間世界一周」。

一瞬だれの曲かと思う冒頭。

サビに入って、ほのかに感じる「ザ・アリプロ感」。

間奏は、メリーゴーランドみたいな、ちょっとレトロな気配も…?

どこか郷愁めいていて、泣きたくなるような。夢だからかな。

「80秒間」っていうから、SNSのショートか何かかなと予想したら、夢のなかで空や海や大地を駆け抜ける曲でした。

砂嵐 列車は走る
幻の駅 行き過ぎ
伴走は 天馬かドラゴン
辿りつきたし
誰も知らない異世界

「80秒間世界一周」より引用

まさに、まさに、私の研究もそうありたい。
(あれ?でも、そうすると私の研究も夢オチになってしまう!)

4曲目の「密林ヨリ応答セヨ」。

曲調は、アリプロ初期っぽさがどことなく伺える。
(と、思ったら、「密猟区」を意識した曲らしい)

でも歌詞は、まさに今の閉塞感を風刺しているようにもとれる。

戻れる 故郷が
あるならどの世界で
生まれる 時代が
いつなら幸運なのか

「密林ヨリ応答セヨ」より引用

本当そうよね~…

5曲目は「NON-HUMAN」。

どこのポップシンガーかと思った~~

でも歌い方は一番特殊かも。

私も親に「本当に人間なの?」って聞かれるくらいには、やや人間っぽくないところがある。

景色を見て感動するとか、食べることを楽しむ心とかが欠けているみたい。

それでも、「まあいっか」と思えるのは、アリプロがあるから。

アリプロの世界を通して、日常や現実では知り得ない感覚を知ることができる。

たとえば、第二次大戦を背景にした作品をみて、人は「かわいそう」と思うかもしれないけど、私はそれ以上に、「私の胸にある日本人の血が、DNAが泣いている」という感覚をおぼえる。

その感覚って、アリプロの「大和ソング」によるものだと思う。

ありふれた人間らしさは欠けていても、遠き日々に想いをはせることはできる。

人間じゃなくていいと思える。

遙か昔 生まれる前
異なる 存在だった
忘れてない おとぎ話
あのまま 生きていたかった
夢の夢の ように

「NON-HUMAN」より引用

6曲目は「STILL ALIVE」。

「魂ノ代」と入り方が似ていたので、もしかしたら繋がってる?とか思ったけど、勘違いかな。

7曲目は「瓦礫ノ子守歌」。

これはなあぁぁ…。

このタイミングで出された曲ともなれば、想像も膨らむもので。泣ける。

(ライブでアリカさん歌い泣きしてしまわないかしら)

「アリプロって、おどろおどろしい曲よりも、こういうしっとりした曲の方が実は壮絶なメッセージが込められてたりするのよね~」なんて思ってたら、突然の転調。

ただ「悲しい」とか「可哀想」じゃなくて、表面的に平和を願うとかじゃなくて、真実の、底の底の闇に光の筋を差してきたアリプロだからこそ、創れる曲だなと感じた。

それにしても、ここに来てやっとヴァイオリンとかオーケストラが出てきたんじゃないかってほど、ギター尽くしのアルバムだったことに気づく。

8曲目は「美シ国ノ四季ハ夢ム」。

島根に来て1年。

都会では「暑い」とか「寒い」で感じ取る四季を、目に映る景色で感じた1年でもあったなあ。

その贅沢な日常にも大和魂は宿るのかもね、なんて。

芽吹くほほえみ ほころぶ莟
かそけき命 包むように
始まりの季をくりかえし

「美シ国ノ四季ハ夢ム」より引用

っていう詞、いいなあ。いいなあ。

「いつものアリプロ」感もあって良し。

9曲目は「天気晴朗ナレドモ波高シ」。

もう、もう、好きすぎるこの曲…。

というか泣いてしまふ。

戦争知らぬ ぼくらは
生きることが 闘い
持てる 智恵と勇気に
導びかれよ 勝運

たとえ 倒れ伏しても
天を仰ぎ 目覚めん
そこには見護る
光が差すだろう

「天気晴朗ナレドモ波高シ」より引用

アリプロの曲そのものが、奈落の底から見上げる一筋の光だったりするもので。

それにしても、「フレー!フレー!」は「奮え!奮え!」と当てられていたとは知らなかったなあ。

アリカさんのこぶしを利かせた歌い方もよきよき。

この國の未来を想って血を流してきた人々の「大和魂」&彼らが築いてきた歴史の先に今の自分があることを謳う「大和ソング」。

大和ソングは「ヤマトイズム」以来の5年ぶり?

当時は、もう大和ソングは出尽くした感があるとアリカさんは仰っていた気がするけど、まだ全然いけますねっていう。

長らく「愛と誠」の呪いというかプレッシャーに苦しんでおられる様子だったけど、片倉さんさすがです。

大和ソングの中で「見ぬ友へ」という曲があるけれど、今回は「見ぬ同胞たちへ」になっていた。

本当、平和という生き物は、飼い慣らしてはいけないね…。

(曲中3回も入ってくる突撃ラッパは、イメージがイメージというか…最初はちょっと抵抗あったけど、広い意味で捉えようとしていくうちに、抵抗感も薄れてきた。)

そして最後の「夜半曇天晴レテ月蒼シ[instrumental]」につながる。

この曲のように、穏やかでやさしい月を仰ぎ見る日がくるのはいつでしょう。

3月&4月のライブも楽しみ!

今回、ヴァイオリンのガイズは、半分くらい暇になるんだろうか…?それとも弦のためにアレンジするのかな?

30周年ということで、ベルエポの「Café d’ALIで逢いましょう」はセトリに入るかな。

旗を振るということで、「日出づる万國博覧会」はくるかも。

大和ソングで「神風」、「青嵐血風禄」あるかな。

あと「青空」、「腕 kaina」とか?

ゾンビ系の「凶夢伝染」、「少女蜜葬~Le sang et le miel」、「亡骸の女」とかこないかな。

「STILL ALIVE」に近いのは「水月鏡花」かしら。

「万花繚乱姥桜」がらみで「黒百合隠密カゲキダン」、「自由戀愛」、「恋する和牛」…?

わくわく。

Pocket
LINEで送る